■ 為替の考え方 2008/11/24 NEW
今、だいたい1ドル95円くらいです。為替レートは日々、変動していますが、昔は固定相場でした。戦後、1ドル360円の時代が長く続きました。
金融危機のおかげで、「ブレトンウッズ体制」なんて言葉がよく出てきます。
これは1944年にIMF国際通貨基金を中心とする体制ができました。連合国は戦争中に戦後の国際金融体制の青写真を書いていました。アメリカが戦争中から日本の占領政策を計画していたことと同じです。
その中心は金・ドル本位制です。1949年にアメリカ政府は「国際取引の決済のために事実上、自由に金を売買する」ことをIMFに通告します。決して、協定が結ばれたわけではないのです。1934年にできたアメリカの金準備法では財務長官の権限で、外国政府が持っているドルを金に交換したいと言えば応ずることができます。また、財務長官の判断で、いつでも停止できるようになっています。当時、金1オンス35ドルというレートが決まっています。
そのおかげで、アメリカのドルが戦後、いわゆる「基軸通貨」になったのです。
ドルが世界中にばらまかれますから、アメリカの保有する金が足らなくなります。フランスのドゴール大統領が大量の金の引き出しを行った後、1971年8月15日、ニクソン大統領が金ドルの交換停止を発表。これが、ニクソンショックです。
そして、固定相場制がくずれ、徐々に今のような完全な変動相場制度になりました。1ドル360円だった円が、1995年にいったんは1ドル80円を切りましたね。そして、今は1ドル95円程度。
為替はいろいろな理由で高くなったり、安くなったりします。昔は実需原則があって、貿易のような実際の取引の裏付けのある場合のみ、為替の売買ができる仕組みでした。その後、実需原則が撤廃されて、マネーゲームの市場となりました。
新聞などでは、「円高でトヨタ自動車が減益!」という記事が踊りますから、円が高いのが悪いことのように思いますね。ほんとうでしょうか?
たしかに、これまでの景気回復は、輸出主導でしたから、そのような面もないことはないでしょう。しかし、GDPに占める輸出の比率は1割もありません。一方、輸入も同じ程度にはありますから、円高でうるおう企業もたくさんあります。
今、原油や穀物価格も下がってきていますが、円高のおかげで、すごく安く手に入れることができています。海外旅行に行けば、円が強い方が良いに決まっています。為替は結局、その国の力を表しているのです。基本的には円が強い方が良いのです。
この金融危機の後、対ドルで高くなっているのは円だけです。その他の通貨は、実はドル高になっています。つまり、日本だけは「他の国よりもまだまし。」状態だからなのです。海外から材料を輸入しているビジネスは、利益を生んでいます。もっともそういう会社の社長さんは黙っています。円高で困るところは声が大きいのでマスコミもそれに便乗しているような気がします。
為替の問題は乱高下することがいけないのであって、安定していれば少しくらい円高でも企業は対応できます。おそらく1ドル90円くらいまでなら、日本の輸出産業は競争できるはずです。もっとも繊維などの産業は円高になると競争力をなくし、中国やヴェトナムに工場が出て行ってしまいました。いわゆる「付加価値の高い産業」が日本に残ることになりましたが、グローバルな競争があることを前提にすれば、それは先進国の宿命なのです。さらなる先端産業を育てて、雇用を確保するとともに、セイフティ—ネットを確保するように政府が努力するしかありません。
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