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格差の是正か貧困問題か? 2007/01/20

 小泉政権が終わって、格差の拡大が指摘されています。格差の測り方には統計上の様々な制約がありますので、一概に決め付けることはできません。内閣府はそもそも個人差の大きい高齢者の世帯が増えているため、表面上の所得格差が拡大しているだけだと説明しています。しかし、たとえばOECDによる「貧困率」(全国民を可処分所得の高い順に並べたときに、中央に位置した人の可処分所得額の半分に満たない人の数)でみると、日本は先進国の中では、最悪のメキシコから数えて5番目というショッキングな結果が出ています。貧困率最悪の国々にはアメリカやトルコがあります。逆に、貧困率が低い国は、チェコ、デンマークなどの北欧の国々です。


 生活保護を受けている世帯は107万世帯で、約150万人と年々増加傾向にあります。保険料を払えず、医療保険に加入できない世帯も30万世帯以上あります。また、高齢者が増えているからでしょうが、「貯蓄なし世帯」の比率も、昭和62年の3.3%から増加し、平成17年で23.8%、18年が22.9%と高止まりしています。一方で、現在働いている人の1/3、1600万人がパートや派遣社員という形で、正社員ではありません。30年前は働いている人の9割が正社員でした。非正規の社員として働くと、社会保険の適用もなく、賃金水準も低いままです。正社員との大きな格差がそこにあります。

 努力した人とそうでない人まで同じように扱う「結果の平等」は百害あって一利なしですが、「機会の平等」まで奪われるような政策はおかしいと考えます。しかし、政策課題を「格差の是正」だと設定しますと成果を得られないと考えます。結局、格差問題は程度問題になるからです。「ある程度の格差はしかたがないよね。」ということから出発しますから、決め手がなくなるのです。したがって、安倍内閣の再チャレンジも中途半端な政策で終わるのです。


 問題は、サラリーマンの三分の一の1600万人の非正規の雇用者の中で、年収200万円未満(生活保護世帯年収基準195万円)の割合が約8割の1260万人もいることです。年収200万円未満の生活は、今の日本では「貧困(ワーキングプアー)」と捉えるべきです。内訳をみると、非正規雇用者の中で、男性の約6割、女性約9割が「貧困」層なのです。女性の場合でも単身世帯や母子家庭の比率が高まっています。


 このような「貧困問題」を解決するためには、パートや派遣であっても同一労働は同一賃金とすべきですし、社会保険の適用は必要です。政府は職業訓練や再教育にもっと力を入れるべきです。直接的には、最低賃金を思い切って引き上げなければなりません。競争条件が同じであれば、最低賃金の引き上げも経済に与える影響はそう大きくないでしょう。労働組合の組織率が年々低くなってきていますが、正社員を対象とする労働組合運動ではこれらの「貧困」層と言える非正規の雇用者を救うことはできません。政策課題を「機会の平等」を確保しつつ、パートや派遣社員の非正規雇用者を貧困から救う社会を実現に置いて、抜本的に労働政策を変革しなければなりません。


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